原子力発電所の構造と選ばれる理由

最終更新日 2024年4月29日

原子力発電所とはその名前の通り原子の力を用いて電気を生み出すための施設で、効率性の高さを見込んで作られます。
ただ電気を生み出す仕組みそのものには原子力は関わっていません。

 

原発の仕組みをアトックスが解説

基本的に電気を生み出す仕組みは、懐中電灯に付属している手回し機構から大型のものまで共通しています。
設置されている発電機は回転する力によって電気を生み出し、その回転を作る部分に違いがあります。

水力発電では水車のように、火力発電では水を蒸気に換えてその勢いでタービンを回します。
そして原子力発電所ではそのタービンを回す蒸気生み出す熱を、原子の力によって生み出しています。

参考:アトックス 年収

ではその熱を発生させる仕組みを考えてみましょう。
最初の元となるのはウランという燃料で、自然界に存在しているものです。

特にオーストラリアで多く採られることで知られていますが、輸出としてはカナダの方が積極的に行っています。
そのウランにも種類があって、天然のものには核分裂を起こしやすい235が約0.7%、残りの99.3%が核分裂しにくい238で構成されています。

 

全ての物質は元を辿れば原子で出来ている

ウランに限らず全ての物質は元を辿れば原子で出来ていて、中心には原子核があります。
そしてその周りを電子が周っている形です。
ウランの原子核は電子と共に、電荷を帯びておらず不安定な中性子で構成されています。

そんなウランの原子核に別の中性子をぶつけると、核分裂という反応を引き起こします。
その核分裂の際に生まれるエネルギーが熱となり、水を蒸気へと変化させます。

特徴的なのはそのエネルギーを生み出す反応が連鎖することで、核分裂をするとそこからまた別の中性子が生まれます。
その中性子がさらに他のウランにぶつかり、繰り返しエネルギーを発生させます。
構造としては原子爆弾と同じですが、大きな違いはその規模をコントロールするという点です。

 

発電の際はその割合を全体の3から5%程度に留める

その時に核分裂しにくいウラン238が役立ちます。
爆弾にすると全ての核分裂を一気に起こすことで威力を高めますが、発電の際はその割合を全体の3から5%程度に留めます。
その上中性子を吸収する性質を持つ制御棒を必要に応じて使用して、細かな調整を行います。

その作業が全て上手くいけば、効率的に電気を生み出すことができます。
ただ原子力発電所に対して良いイメージを持っていない人も多く、セットとしてメルトダウンという言葉も覚えているでしょう。

発電する一連の流れからもわかるように、ウランが分裂する流れは放っておくと非常に長い時間続きます。
したがって停止させるためには、反応の連鎖をしっかりと終わらせなければなりません。

 

制御棒と共に冷却が行われる

基本的には制御棒と共に冷却が行われます。
日本では原子力発電所は例外なく海の近くに置いてありますが、それは原子炉を海水で冷却する必要があるからです。
しかしその冷却が十分に行われないと、反応はそのまま続いていくことになります。

当然エネルギーの産出も行われ、燃料やその周辺の温度が非常に高くなります。
その温度はウランや発電するための仕組みを構成している部品さえも溶かすほどになり、これをメルトダウンと呼びます。

重量と高温によって、構造の底までも溶かしかねない状態です。
冷却が十分にできなくなる理由は色々あり、よく知られている災害以外にも、冷やすための循環が故障したり、燃料側に異常が発生するなどが考えられます。
ただその形がどのようなものであっても、行きつく先は共通しています。

 

ウランやプルトニウムに放射能を放つ性質がある

それの何が危ないかというと、ウランや反応後に生み出されるプルトニウムに、放射能を放つ性質がある点です。
少しでも漏れると人体に悪影響を及ぼすため、限られた範囲内で確実に留めておかなければなりません。

しかしメルトダウンが起こると漏れ出る可能性が高くなります。
つまり特に冷却面での扱いに少しでも問題があると、危険に直結する恐れがあるというわけです。
では他にも発電所の形がある中で、なぜそのようなリスクを伴う原子力発電所が選ばれるかというと、理由は複数あります。

まずは燃料の問題で、ウランを多く産出できるオーストラリアやカナダは、国として安定しています。
そのため国同士のトラブルによる、ウランの供給が不安定になりにくいです。

この点は石油と対比して考えるとよくわかるはずです。
そして効率性の高さも大きなポイントで、燃料に対して生み出せる電気の量が多いです。

それを電気代の安さや、電力不足の防止に繋げられます。
さらに発電する性質上、火力発電のように二酸化炭素を生み出しません。
したがって環境にも優しいという側面を持っています。

 

まとめ

ただこれらのメリットはあくまでも完全に制御できた上での話なので、不安定な状況ではリスクを伴うことになります。
そのリスクが非常に大きいのは日本の例でも明らかになっていることなので、ドイツを始めとして、すでに原子力発電所の廃止を決定している国もあります。
そのように継続の可否に関わらず、検討の余地が残っている状況です。